Last Sound





「……なあ、エトー」


俺が部室にこもって約1時間。

全員の詞をじっくり読みこんでいた。


メンバーの書く字を俺は知らないから誰がどの歌詞を書いたのか分からなくて。

でもそのほうが余分な感情が入らない分、平等に見られた気がする。


そして俺が部室に入って30分くらい経った頃。

多分、エトーは気配を消して入ってきたつもりだったろうが、

そこにエトーがいることは最初から分かってた。




「知ってたんなら一言くらい声かけろよ。

もう俺、立ち疲れた」


「勝手にエトーが立ってたんだろ。

知るかよ」


はあ、と1つ大きな溜め息を零したエトーは俺の横に座った。



「これ、見る?」


紙を見せると



「いいのか?」

なんて遠慮した素振りを見せるエトー。


ホントは見たくて見たくて仕方ないくせに。



「どーぞ。

誰が誰のか分かんないだろーけど」


「何言ってんだ。

少なくともお前の字は分かるから」


ニヤッとエトーは笑う。


うわっ…そうだ。

俺の担任、3年もやってりゃ筆跡、わかるもんな。



ま、仕方ないか。

そう諦めて俺はエトーが詞を読み終わるのを待っていた。






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