Last Sound
「あのな、渡辺波瑠斗。
キミはそう思っても、大人にはいろんな事情ってものがあるんだよ。
だから黙っておいてもらえるかな」
口調は優しかったが、その目は鋭くて。
だけど俺はそんなことに屈するようなヤツじゃないんだな、残念ながら。
「はあ…まあ大人の事情は分かったとして、
俺たちを呼び出したのはなんでですか?
こう見えても俺、結構忙しい身なんですけど」
家帰ったらゴロゴロする、っていう仕事があるんだよな。
「じゃあ、はっきり言おう。
私は、軽音部創設に判を押したくない」
はあ?と、思わず声に出してしまった。
「キミの将来のことを考えて言っているんだ。
職員室の中にも私以外に反対な人たちはたくさんいる。
なあ、自分のために諦めないか?」
…なるほどな。
分かっちゃったよ、俺。
「丸山センセ?」
「なんだ?」
「そんなに、校長に媚(コビ)売りたいですか?」
本当はお前、校長の腰巾着だろ、
って言いたかったけど、
さすがに常識的なことを考えてやめた。