Last Sound
腹の底からフツフツと湧き上がる怒り。
必死にそれを抑える。
「…あんな生徒?」
「そうですよ。
ほら、あなたが連れてきた渡辺波瑠斗」
いっそのこと、殴り飛ばしてやろうか。
それくらい、校長にムカついた。腹が立った。
だけど、俺は大人で、教師だ。
この怒りに任せてこの人を殴ったところで、
俺はクビだろうし、何より、軽音部の印象が悪くなる。
俺はどうなったって構わない。
だけど軽音部だけは…アイツらだけは、どうしても守りたい。
だから握った拳に力を入れて、
必死に怒りを堪えた。
「…波瑠斗は、あんな生徒…じゃありません」
せめて。
せめてこれだけは言わせろよ、校長。
「あんな生徒…なんかじゃありません。
波瑠斗は優秀な生徒です。
確かに成績はよくありません。
この間のことでは失礼な発言もしました。
だけど、アイツはいいヤツなんです。
仲間のために必死になって、
自分の身を削ってでも
仲間だけは、守りたい。
そういうヤツなんです。
だから波瑠斗をあんな生徒呼ばわり、しないでください」
自分で言っていて思った。
これじゃあまるで、俺と波瑠斗はそっくりだ。
俺、アイツに少し…影響受けてんのかもな。