Last Sound
「…ね、もう諦めようよ。
勉強の邪魔みたいだし」
遠慮がちに俺の制服の袖を引っ張る朝陽。
でもそうは行かねーんだよ。
なんせ俺には時間がない。
「俺、渡辺波瑠斗。
で、こっちが風間朝陽。
キミは…坂下楽、であってるよね?」
「…そうだけど」
この際だ。
返事はいくら素っ気なくてもいい。
とりあえず無理にでも話を聞いて貰おう。
「俺ら、軽音部作ろうと思ってる。
最終的には学祭のステージでバンドやりたいんだ。
で今、まだ俺と朝陽のギター2人しかいない。
そこでキミにベース、やってもらいたいんだ。
どうかな?」
できるだけ言葉遣いには気を遣った。
でも聞こえてきた返事は…
「…断る」
このたった一言だけだった。