Last Sound
「…めでたいヤツだ」
坂下楽はそう言って鼻でふっと笑った。
そしてそのタイミングでちょうどチャイムが鳴る。
言い返してやりたいキモチも山々だったが
ぐっと堪えて1組の教室を出た。
「ね…波瑠斗くん?」
「ん?」
今まで黙っていた朝陽が廊下に出たところでやっと口を開いた。
「あの、坂下楽て人…やめておいたら?
すごく感じ悪かったよ…」
それにああいうタイプ苦手…と最後に小さな声で呟く朝陽。
「なあ、朝陽。
俺の勝手な判断と独断と偏見だけど。
多分…アイツ、俺たちが感じてるよりずっといいヤツだと思うんだ」
「えっ?」
驚いたような朝陽の声。
「いや、たったあれだけの会話だったし、
会話だけ聞けば相当嫌味なヤツだとは思う。
けど、なんて言うんだろ…
なんかアイツが言ってる言葉がどうしても、坂下楽自身の本心じゃない気がして仕方ないんだ…」
何がそう俺を思わせているのかは分からない。
でも、アイツの言ったことは全部、大人に言う建て前な気がする。
きっと、坂下楽本人はあんなこと、思ってないと思うんだ。