Last Sound
―Side 拓馬―
「………う、うまい」
俺たちのクラスにギターの音が鳴り響いていた。
そして時折顔を見合わせながら『カノンロック』と呼ばれる曲を弾く2人。
…アリエナイ。
こんなの、俺が知っている波瑠斗でも朝陽でもない。
俺が知ってる波瑠斗は何に熱中するでもなく、いつもエトーとバカ騒ぎしてて、
朝陽は物静かで、とにかく人見知りで。
なのに今俺の前でギターを弾いている2人は
今までに見たことのないくらい、輝いていて。
指の動きが半端なくて。
思わず、
『うまい』
なんてありきたりな言葉が唇の端から漏れた。
別に俺は楽器が弾けるワケでもないし、
音楽なんて全然興味ないし、
なんだったら楽譜もまともに読めないような音楽音痴だけど。
でもそんな素人の俺の目にも2人はとてつもなく、うまく映った。