Last Sound
「お前なぁ…時間、ただでさえ足りないのにそんな悠長なこと言ってていいのかよ?」
俺の発言を聞いたエトーは呆れ顔。
でも、仕方ないだろ。
「煮詰まったときは、1回休んでリフレッシュ。
これ、基本だから」
それに俺たちには解決しなきゃならない問題はこれだけじゃないんだ。
まだ、1度だって音合わせしたことのない俺たちのバンド。
息が合うのか、ボーカルを誰がやるのか。
どんな曲を演奏するのか。
まだ、始まったばかりなんだ、俺たちは。
確かに焦らなきゃならないスケジュールではある。
だからって焦ったところでいい解決方法が見つかるワケじゃないだろ?
ほら、よく言うじゃん。
『急がば回れ』
時間がなくても危ない近道を選ぶんじゃなく、
多少遠回りでも安全な道を行け、
っていう俺たちのご先祖様からの教えだ。
「はぁ…波瑠斗はホント、マイペースなんだから。
で、お前らは?
それでいいのか?」
「リーダーの波瑠斗くんの意見は絶対だから」
朝陽がそう代表で答える。
「ま、そういうことだ、エトー。
今日はありがとう。
気合い、入ったよ」
立ち上がった俺たちはエトーを教室に残し、校舎をあとにした。