モザイク
「おいっ、河田。」
「・・・。」
同じだ。返事はない。
安川は車外に飛び降りた。
「こっちに来て下さい。」
鉄道員として、本来はあってはいけない行動だろう。乗客の安全を優先するべきだ。しかし、この不可解な症状に犯された同僚を、どうして後回しにできるだろうか。今、河田はどんな状態にあるのかすら、全く知ることは出来ないのだ。
「大丈夫ですか?」
救急隊員が訊いてきた。
「わからない・・・。」
「何言っているんですか。こんな時にふざけないで下さい。」
「本当にわからないんだよ。さっきまで話していたんだ。でも、急に話さなくなった。俺には何が起きているのかわからないんだ。なぁ、河田を、河田を助けてやってくれよ。」
安川は訴えた。
「もちろん、そのつもりです。だから、その、河田さんの所に連れて行って下さい。」
走った。そして救急隊員は言葉を失った。
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