モザイク
校舎だけがモザイクに埋もれていたわけではない。ここ市民病院も同じだった。モザイクに浸食される病院。これが切り替えられたニュースだった。
脱線で怪我をした人たちは、ほとんどが市民病院に収容されていた。そのせいもあって、病院の前には多くのテレビカメラが置かれ、その様子を具に写していた。
その前で変化した。
「お、おい・・・あれって・・・。」
最初に声を上げたのは、ひとりのカメラマンだった。それを合図にするように、またひとり、またひとりとカメラマンたちは病院の異変に声を上げた。
「俺、目がおかしくなったんじゃないよな?」
側にいたディレクターたちも騒ぎ始めた。そして、最後に異変を感じ取ったのはレポーターたちだ。振り返り動揺するも、すぐにプロとしての意地を見せた。
「ご覧下さい・・・。」
手をモザイクに向けた。それに合わせ、カメラマンもモザイクを写した。ただ、動揺は拭いきれなかったらしい。すぐにピントを合わせられずにいた。こう言う時、女の方が強いようだ。
「私たちは、今、信じられない光景を目の前にしています。まず、断っておきます。この映像は決して特撮の類ではありません。本当に起きているのです。病院に、病院に、モザイクがかかっています。」
レポーターがそう言っている間も、モザイクのエリアはどんどん広くなっていく。
「まだ、モザイクは広がっています。いったい、どうなってしまうのでしょうか?」
モザイクの側の窓をカメラは写した。しかし、外の変化に気がついていないのか、中にいる看護士は慌ただしく働いていた。
「大変です。看護士の方が、モザイクに、モザイクに飲み込まれそうです。」
窓縁までモザイクは押し寄せていた。そして、ついに窓も浸食した。
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