モザイク
四角い汗
意外な物もモザイクに感染していた。これは神宮寺も丹沢も気がついていない事実だ。しかし、皮肉な事にその感染を大江が証明してくれていた。

バスは走る。
大江はそのバスの窓を開けていた。これが災いした。
走ったせいもあり、大江の額には汗が滲んでいた。この汗を乾かそうと窓を開けたのだ。
「ふうぅ。」
気持ちよさそうに声を上げる。その声に合わせて、汗は車外へと飛んでいく。この汗が感染していたのだ。パッと見では決して気がつかない。しかし、側に寄ればわかる、四角い形。モザイクが汗の中で笑っていた。

一滴目。それは道路に垂れた。
二滴目。次はどこかの家の塀だ。
三滴目。それはどこかの庭木に付いた。
道路はモザイクに染まった。塀も同じだ。ただ、庭木はその青々とした葉を輝かせたままだった。大江の視界には、その庭木しか入らなかった。そのせいでモザイクが波紋のように広がっていく景色にまるで気が付かないでいた。

バスは走る。
その後ろには長い、とても長いモザイクの道が続いていた。

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