モザイク
＜ま、まさか・・・そんな事・・・。＞
「そんなはずはない。ここに来るまで、廊下はモザイク一色と言った感じだった。」
そうは言ったものの不安になり、廊下の方を覗いてみた。やはり廊下はモザイクだ。
「ほらな。モザイクじゃないか。」
また、あさっての方に話した。
「どこがモザイクなんだよ？」
「そうだよ、ほらっ、あそこにいる看護婦さんも普通だよ。」
桜井の目には看護婦などいない。白い色が多く含まれているモザイクが少し離れたところに見える。それが看護婦なのだろうか。
「看護婦だって？じゃあ、その看護婦の胸に名札がついているだろう。その名札を読んでもらえないか？」
「あ、いいよ。金田、金田って書いてある。」
それを聞くと桜井は見えている白いモザイクに近づき、今聞いた名前を呼んだ。
「か、金田さん？」
なぜか緊張した。少しかすれた声で看護婦の名を呼んだ。
「ひっ。」
まず驚きの声が聞こえた。それから恐る恐る聞いてきた。
「その声、桜井先生ですか？」
「そうです。桜井です。僕の姿が見えますか？」
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表紙・目次

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