モザイク
「あぁ、そうだ。理由はわからないが、モザイク後になったものをモザイク越しに見ると、どうやら普通の景色に戻るらしい。きっと同調しているんだと思うが・・・。だから、瞳がモザイクに変わっている彼らは、このモザイクに変わり果てた病院が普通に見えたのさ。」
「なるほど。」
桜井は感心した。
「ただ、これはあくまでも見えるだけだ。お前、今、全員がモザイクになれば解決すると思ってたろ?」
図星だ。心の中を見透かされ、桜井は慌てふためいた。
「ど、ど、どうしてわかったんですか?」
「お前、今、お気楽そうな顔したからな。ホント、楽する事しか考えないやつだな。」
「すみません。でも、見えるようになれば解決って言うのは間違いなんですか?」
「お前、本気で言っているのか?そのサングラスについている欠片、何の欠片だと思う?」
神宮寺は聞いた。
「えっ、これ、ガラスじゃないんですか?」
欠け方はガラスそのものだ。桜井は思ったままを言った。
「違うよ。椅子だ、それも木で出来た椅子だ。」
「えっ、これが木?」
マジマジと欠片を見直してみたが、どう見ても木には見えない。
「そうだ。木だ。つまりモザイクに変わると言うのは、ガラスに変わると言う事でもあるんだよ。」
何かが崩れるような音がした。
「うわっ。」
桜井は叫んだ。神宮寺は凹んだ。その音は神宮寺の車が崩れる音だったからだ。
「ここまで無理させて悪かったな・・・。」
オレンジ色の砂が、さらさらと風にさらわれた。
神宮寺はこうなる事をわかっていた。わかっていた上で車を走らせ、結果こうなってしまった事を悔やんでいた。哀しみに襲われた。
< 81 / 97 >

この作品をシェア

pagetop