モザイク
今度は落胆していた。
「そんな、その欠片貸してみて。」
カナは父親の持っていた欠片を受け取り、同じように覗いてみた。やはり、自分の持っている欠片と同じように、父親の姿が見えた。
「お父さん、見えるよ。覗き方が悪かったんじゃ・・・。」
カナはそう言ったものの、本当は違うところに理由があると感じていた。きっと父親の変化が関係しているのだろう。ただ、あえて触れずにおいた。
「そうなのか・・・?」
娘に言われ、もう一度、欠片を覗く父親。しかし、カナの思った通り見える事はなかった。
「それより、おでこ、ちょっと見せて。」
もう話を変えるしかない。どんな事をしても、父親は自分を見られないのだ。カナは気持ちも切り替えた。
「大丈夫だよ、少しぶつけただけだから。」
父親は傷を見せようとしない。
「いいから見せて。」
カナは押さえている手を両手で持ち、ゆっくりとおでこから離した。傷はカナの理解を超えていた。
<どう言うこと?!>
おでこにヒビが入っている。さながら父親のおでこは割れた花瓶のようだ。年代物の花瓶の色合いと、父親のやや茶色いおでこ。瓜二つだ。
<ひ、人が割れるなんて・・・。>
また、天井から欠片が落ちてきた。今度はそれなりに大きい。鈍い音を立て、床板を突き破った。
<あんなのがお父さんに当たったら・・・。お父さんは・・・。>
背筋が凍った。
幸い、今は揺れが止んでいる。逃げるなら今だ。
「お父さん、ここは危ないよ。外に逃げよう。」
「あぁ、そうだな。でもな、カナ・・・。」
「何?」
「お父さんには、所々モザイクになってて、どこに逃げたらいいのかわからないんだよ。すまないが案内してくれるかい?」
「当然でしょ!何、いちいちそんなの聞いてるの?ほら、行くよ。」
カナは父親の手を取った。また、カナの理解を超えた。父親の手は信じられないほど固い。
<何、この感触・・・。>
胸の辺りを大きな虫が駆け抜けていくような、そんな感覚に襲われた。体がビクンと反応した。
「どうした、カナ?」
「そんな、その欠片貸してみて。」
カナは父親の持っていた欠片を受け取り、同じように覗いてみた。やはり、自分の持っている欠片と同じように、父親の姿が見えた。
「お父さん、見えるよ。覗き方が悪かったんじゃ・・・。」
カナはそう言ったものの、本当は違うところに理由があると感じていた。きっと父親の変化が関係しているのだろう。ただ、あえて触れずにおいた。
「そうなのか・・・?」
娘に言われ、もう一度、欠片を覗く父親。しかし、カナの思った通り見える事はなかった。
「それより、おでこ、ちょっと見せて。」
もう話を変えるしかない。どんな事をしても、父親は自分を見られないのだ。カナは気持ちも切り替えた。
「大丈夫だよ、少しぶつけただけだから。」
父親は傷を見せようとしない。
「いいから見せて。」
カナは押さえている手を両手で持ち、ゆっくりとおでこから離した。傷はカナの理解を超えていた。
<どう言うこと?!>
おでこにヒビが入っている。さながら父親のおでこは割れた花瓶のようだ。年代物の花瓶の色合いと、父親のやや茶色いおでこ。瓜二つだ。
<ひ、人が割れるなんて・・・。>
また、天井から欠片が落ちてきた。今度はそれなりに大きい。鈍い音を立て、床板を突き破った。
<あんなのがお父さんに当たったら・・・。お父さんは・・・。>
背筋が凍った。
幸い、今は揺れが止んでいる。逃げるなら今だ。
「お父さん、ここは危ないよ。外に逃げよう。」
「あぁ、そうだな。でもな、カナ・・・。」
「何?」
「お父さんには、所々モザイクになってて、どこに逃げたらいいのかわからないんだよ。すまないが案内してくれるかい?」
「当然でしょ!何、いちいちそんなの聞いてるの?ほら、行くよ。」
カナは父親の手を取った。また、カナの理解を超えた。父親の手は信じられないほど固い。
<何、この感触・・・。>
胸の辺りを大きな虫が駆け抜けていくような、そんな感覚に襲われた。体がビクンと反応した。
「どうした、カナ?」