妖士(ようし)
「政行!!一体どうゆうことだ!!」

食ってかかる竜を軽くあしらって政行は疾風に手招きした。

「来い、疾風。竜も。」

「義母上は・・・」

美しい顔を歪ませて義母は唇を噛み締めていた。

「なぜ・・・琉妃様が・・・あなた・・・」

政行は陽妃を見つめた。

「言ったはずだ。桐子(とうこ)正妃は、琉妃だと。」

陽妃、桐子は顔を上げた。頬にこぼれ落ちる雫が全てを語っていた。

なぜ・・・?
私一人を愛してくれないの?
私の中に琉妃様を探すの・・・?

陽妃は目許を袖でおさえたまま背を向け、去った。

はじめて見る義母の涙。
疾風は、父を見上げた。

青ざめた顔。
しかし、義母に告げたことを後悔している様子はない。

「中へ・・・」

政行は妻戸を開いた。
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