妖士(ようし)
時が止まった気がした。

自分の中で思い描いていた、優しく美しい母の姿が崩れ去った。

「え・・・」

嘘だと笑って言ってくれることを期待して政行を見上げたが、政行は険しい表情を崩さなかった。

「だって・・・だって」

言葉にならない感情を握りこぶしにこめる。

「本名は瑛子と言う。
あいつは、お前を産んですぐに姿を消した。
そのペンダントをお前に託して・・・」

父は息子に頭を下げた。

「すまない。隠していて・・・。だがこれだけは覚えておいてほしい。瑛子は・・・お前の母はお前を愛している。」




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