妖士(ようし)
「お帰りなさい。」

障子の閉まる音に、初姫・麗貴妃は笑顔で答えた。

「ただいま。」

疾風は力無く微笑んだ。
その肩はいつになく弱々しい。

「一体どうなさったの?」
側に行って、直衣(のうし・仕事時に上に着る、スーツみたいなもの)を受け取ると、じっと顔を見つめられた。

「疾風・・・?」

恥ずかしいのと驚いたので顔が赤くなるのが分かった。

疾風は切なそうに目を細めると、優しく麗貴妃の頭を撫でた。

「これ・・・お土産。」

たもとから扇を出すと、麗貴妃の顔がぱっと輝いた。
「私に・・・?綺麗・・・」

広げてみると、紅葉の模様を描いたものだった。


「もう秋だろう?」

初子によく似合うよ。と言われて、麗貴妃は嬉しそうに頷いた。

「ありがとう・・・!」


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