妖士(ようし)
足元に纏わり付く十二単が重たい。

少し先をふわふわ浮かびながら行く幸が心配げに振り返った。

「姫?大丈夫?」

はあはあ息を切らせながら麗貴妃はなんとか答えた。
「へ・・・平気よ・・・」

やがて扉が見えてきた。

翡翠の宮へと続く扉。

幸が通力で扉を開けると、広い廊下が見えた。

何人かの男達が、驚いたように振り返る。

「疾風様のところへ案内しなさい。」

突如現れた美しい女性に男達は呆然としている。

「失礼・・・どなたでしょう?」

扉の陰から、門番らしい男が現れた。

「私は麗貴妃。疾風様の妃です。」

彼女は本来、妃の身分を傘に立てるようなことは好きではないが、状況が状況だ。

「しかし・・・」

さらにいい澱んだ門番をくいっと睨みつけて、麗貴妃は叫んだ。

「控えよ!!わたくしは妖士族次期統領の妃です!」

門番は顔色を変えてはっとひざまずいた。

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