妖士(ようし)
「ありません。」

岩壺の妖に言い切られ、神獣達も苦悩の表情をした。
彼等にとっても妖士族は憎き相手。

しかし、彼等の敬愛する姫は、その妖士族統領を愛し、子を成した。

瑛姫は頷くと岩壺の妖を下がらせた。

「私はどうすればいいの・・・。」

今だかつてないほど憔悴しきった様子に、神獣達は心を痛めた。

一族と我が子。
どちらをとっても辛いことには変わりがない。

皆が下がった巣窟で、瑛姫はただひとり、顔をうずめて苦しんでいた。



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