妖士(ようし)
「母上・・・」

思い悩む瑛姫の背に声をかけたものがいた

神獣達の頭、ヤマタの大蛇だ。

「大蛇・・・」

瑛姫は顔を上げ、実の息子をみやった。

ヤマタの大蛇。
遥か昔より瑛姫に仕え、支えてきた妖怪。
瑛姫の実の息子であり、強大な力を持つ配下。

「大蛇・・・私はどうすればいいの・・・疾風を、あの子を失うなど・・・」

敬愛する母の痛ましい姿に大蛇は苦しむように唸った。

母と共に生きてきてはや八百年の歳月が過ぎようとしていた。

彼は母を愛し、母のために生きてきた。

八百年前の忌まわしい出来事は母の心を深く傷付け、えぐり取った。

だからこそ母には幸せに生きてほしかった。
こんどこそ・・・




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