妖士(ようし)

「疾風っっ!!空だ!」

ひたすら駆けていた疾風は竜の言葉に急停止すると空を見上げた。

本陣に向かって無数の妖怪達が突撃していた。

「俺は本陣に引き返す!お前達は三つに分かれて東西南にいってくれ!」

50人あまりの部下に叫ぶように命じた疾風は踵を返した。

神狐族には八匹の強大な力を持つ神獣がいたはずだ。

先日の九尾もその一匹。

再び本陣へ駆け戻っていると前方から凍が現れた。

「戻るのか・・・?」

一瞬驚いたものの疾風と竜に並んで並走しながら凍が問うた。

「うん!南側はもうあんまり残っていないはずだ・・・」

息を切らしてなおも走りつづける疾風の体が不意に宙に浮いた。

「うわぁっ!」

竜が疾風を担ぎ上げ逞しい四肢で疾走している。

「はじめからこうしてよ・・・」

思わず呟いた疾風にやかましい!!と怒鳴り返した竜は民家や貴族邸の屋根に飛び上がり屋根から屋根へ飛び移っている。

本陣はもう目と鼻の先だった。


< 131 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop