妖士(ようし)
氷雨と呼ばれた狼は、
女の傍にきて静かに見上げた。

「氷雨。時はみちた。我が 一族を破滅に追いやった 人間共に復讐を。」


冷たい声音で言い切った女をしばらく見上げていた氷雨は、唸り声で応えると、静かに茂みの中へ入っていった。

氷雨の尾が消えると女は、踵を返し、元来た道を去っていった。
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