妖士(ようし)
食事をおいしそうに食べる疾風を見て初姫はおかしくなった。

まるで子供のようだわ。
私より五つも年上なのに。
やがて食事が済むと、風呂に入って着替えた。

後は特にすることもなく、寝るにはまだ早い時間だった。

部屋に戻ってみると、疾風が先に来ていた。

何だか申し訳ない気持ちになり、小声で謝った。

「申し訳ありません。疾風様。」

「初子。俺に敬語は使わなくていいよ。年も近いんだし。」

初子。
と呼ばれた瞬間胸が高鳴ったが、それを無視して素直に頷いた。


「あ、そうそう忘れてた。渡さなきゃいけないものがあったんだ。」

そう言うと何かを出してきた。



「それは・・・?」

持っていたのは髪飾りだった。

様々な宝石に彩られ、美しく輝いている。

「これはね、妖士族の王妃のみがつけることを許されたもの。夫、つまり王が正妃に贈る、正妃の証。」


正妃の証・・・。

「これを私に・・・?」

「うん。初子が俺のたった一人の王妃だから。」

嬉しかった。
自分を大事にしてくれることが。

「ありがとう・・・」

涙を堪えて微笑んで見せる。
感謝の気持ちを伝えたかった。
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