妖士(ようし)
それより前・・・

「疾風〜。まだかよ〜?」
竜が退屈そうに、疾風の袖を引っ張った。

「うるさいっっ!!だまってろよ竜!」

都の中の市場。

疾風と竜は扇の店の前に立ち尽くしていた。

疾風は目を見開き、扇を吟味している。

時たま、目を閉じて、初姫の姿を思い浮かべながら、どの扇が似合うか必死に考えているのだ。

「この桜模様も綺麗だなぁ。こっちの桔梗も・・・いや、あっちの撫子も・・・」

こんな調子ではや、1時間が過ぎた。
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