妖士(ようし)
「ったく・・・べた惚れだな」

仕方がなくお座りして待つことにする。

「決めた!!」

疾風が声をあげ、店の主人に差し出して金をはらっている。

扇を大事そうに懐にしまった疾風は、満足げな顔をして大通りを歩いていった。

「結局何にしたんだ?」

見上げて問うてもにこにこして「内緒。」というだけだ。疾風の胸元には紐を通した緑の石が揺れている。

呆れてしばらく放っておこうと決めた竜は、ぴくりと鼻を上へ向けた。

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