妖士(ようし)
同時に、疾風も立ち止まり目をいぶかしげに細めた。
何か感じる・・・?

顔を見合わせた一人と一匹は、その直後、直感が間違ってはいなかったことを、知った。

獣の咆哮が響き渡り、町行く人々は動きを止めた。

疾風はとっさに都に結壁を築いた。

「守っ!!」

地面に手をつき、気合いと共に己の力を大地に注ぐ。
と、突然。
巨大な狐が牙を剥いて向かってきた。

「っっ!?」

結壁に阻まれた狐━妖狐・九尾は苛立って唸り声をあげた。
「おのれ・・・妖士族がいたとは・・・」

九尾は後ろ足で立ち上がると、前足を結壁にかけた。
圧力で結壁を壊そうとしているのだ。

辺りから、妖怪共が集まってきた。

人々は悲鳴をあげ、我先にと逃げ出す。

「疾風!やばいぞ!こいつは九尾だ!!」

竜の叫びに疾風は目をむいた。

「九尾!?封印されてたはずじゃ・・・っっ!!」

九尾と他の妖怪たちの圧力で結壁はきしみ今にも壊れそうだ。

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