妖士(ようし)
その時、二つの風が沸き上がった。

「疾風っっ!!」

「幸!!凍!!」

二人の式神は、闘気をみなぎらせ、敵を睨みつけている。

結壁が大きくたわんだ。
もうひとつ作るか・・・
地面に手をのばそうとしたとき、凛とした声が響き渡った。

「お待ちっ!!」

その声に九尾達は圧力をかけるのをやめ、声の持ち主の方を向いた。

「姫・・・?」

傍らに漆黒の狼、氷雨を連れたあの女だった。

「妖士族率いる式神ね・・・」

楽しそうに女は言った。

しかし、次の瞬間女は目を見開いた。

疾風を凝視している。

「おまえは・・・っっ!?」

信じられないというふうに首を振り、言った。

するとある一匹の妖怪が結壁を破り、疾風の肩に牙を突き立てようと飛び掛かった。

「疾風っっ!!」
竜の悲鳴があがる。
が、
牙が届くことはなかった。
女が手を伸ばして疾風を庇ったのだ。



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