妖士(ようし)
琉妃は織り姫と呼ぶのが面倒だといって、織子と呼んでいたのだ。

「琉妃様っっ!!一体今まで・・・」

顔を歪めてかけよってくる織り姫に静かにと合図をした琉妃は政行に会いたいと言ってきた。

「お願い!織子」

昔の主に逆らえず織り姫は政行なら部屋にいるはずだと告げた。

「私は戻らなくては・・・姫様がお待ちなのです・・・」

琉妃は眉をひそめた。
「姫様って?華姫のこと?」

陽妃の娘の名前を出した琉妃に首を振って織り姫は答えた。
「いいえ。疾風様の奥方様、初子様です。」

琉妃は目を見開いた。

「あの子も・・・もうそんな年なのね・・・」

自分の知らないわが子の成長にほんのわずかに淋しそうに呟いた。

「分かったわ。織子は早く戻りなさい。」

そういってさっさと政行の部屋にいってしまった。

織り姫は、沈みかけている夕日をに目をやって真珠の宮にかえっていった。

< 95 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop