ハーフの恋事情
「でも、本当、一臣君って菜摘一筋よね。他の子たちもあまりにも熱心なんで諦めてるわよ。菜摘もそろそろ彼の気持ちを汲み取って付き合ってあげたら?」
「そうよ。ほとんど公認だしさ、後は菜摘の気持ち一つよ。二人見ててもお似合いだしさ」
「そうそう、菜摘ってドライで色気はないけど、美人だしさ」
その色気がないってのは余計だけど…。
あたしは少しひきつりながら言った。
「一臣とはそんなんじゃないよ。ただ一緒にいるのが多いだけで。あたしもあいつのおかげでこの3年間誰も男が寄ってこなかったんだよっ!」
そうなのだ。一臣と入学早々の一件以来、犬のようにつきまとわれ、気付けば公認のカップルとして噂されるようになる次第。あたしに近寄る男子生徒は影で一臣グループに呼び出されて無言の圧力をかけられたとかないとか…あたしもよく分からないけど。
「何言ってんのよ。それはすなわち一臣君に悪い虫から守ってもらったってことじゃない。大体、菜摘に近寄ろうとして彼らにびびらされて尻尾を巻いて逃げるような男はろくな奴じゃないわよ」
熱弁家で情報通の魂を持つ雛子が拳を込めて力説する。
でも、一臣たちに睨まれたら大抵の男の子たちは逃げると思うけど…。
あたしは少しため息ついて雛子のまだまだ続く話を聞いてると、目の前にプリントが配られた。
「早川さん、今日の放課後クラス委員会するから、その詳細のプリント」
同じクラス委員の氷室君が涼しい顔して立っている。
「あっ、ありがとう。今日だったよね、委員会。」
「そう、校外学習についてのことだから。授業終わったらまた」
彼は柔らかい微笑を浮かべてあたしの席から離れていく。
氷室君とも3年間同じクラスで、唯一一臣からの圧力にも屈しないというかもともと相手にしない人で、彼とは普通に友人関係として成り立っている希少な男子生徒だ。
とても頭が良くて、学年でもトップクラスの成績を誇る。だからと言ってガリ勉タイプでもなくてそれなりにスポーツも出来て統率力もある、なかなかマルチな人である。
「…氷室昴もいいわよねえ」
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