見せ掛けの君
隣の彼女
功大said
――カタカタカタ
――ザワザワ・・・
オフィス内は、タイピングの音と打合せをする話し声で少しざわめいている。
と。
『加持君、これお願い』
ピラッと、横から差し出された書類に顔を上げる。
その腕を視線で辿り、
「あ、はい。
分かりました」
隣の席の上司。南さんだった。
彼女の右手から書類を受け取るも、視線はかち合わなかった。
「(・・・スゲ、)」
それもそのハズ。
彼女の視線はパソコンの画面に向いていて、左手は目まぐるしくタイピングを続けていた。
そう。南さんは。恐ろしく仕事が出来る。
男にもと言っては差別用語になってしまうかもだが、ソレに引けを取らないくらい出来る人なのだ。
その上美人で。容姿端麗。頭脳明晰。なんて、まさにこんな人のことを言うんだろうなぁなんて、ぼんやりと思った。