見せ掛けの君
「南さん、
お願いします。」
出来上がった書類を南さんに提出する。
この年になっても、まだミスがあったらなんて。内心どきどきだった。
『ん。』
またもや目線は合わず。
少し受け流されるような返事だったが、ちゃんと受け取ったところを見ると、話は聞いてくれているようだった。
と。
――キーンコーン・・・
一応の目安としてか、うちのオフィスは12時になるとチャイムが鳴る。
別にこれと言った時間が決まっているわけではないが。12時から食堂が開くからだ。
俺は今ちょうど、キリがいいところなので、このまま昼へと突入してしまおう。
「すいません。
昼、行ってきます。」
『ん。』
右手に先ほど俺が渡した書類。左手はキーボードと、目線は書類と画面の交互に。
なんとも急がしそうで、少し罪悪感。
けれど俺が居たところで何も変わらないとは分かっているので。机の端にあったタバコを掴んで、そそくさと食堂へ向かった。