ダウト-doubt-
序章
「もう、会わない。」
それが、精一杯の強がりだった。
いつまでたっても、思い通りにならない関係を、なんとかしたかっただけ。
それでも、何か変われると思っていた。
『別れる』なんて言葉、使えるほどの関係でもなかった。
ただ、惰性で続いていただけの関係。
本気だったのは、あたしだけで、どう足掻いても、あたしは『彼女』になれなかった。
キレイに言えば、『友達以上恋人未満』。
正確に表現すれば、『赤の他人』。
それでも固執したのは、単純に、好きだったからだと思う。
「お前が決めたなら…。」
それだけ言って、キーケースから、合鍵を外し、机の上に置いた。
「大切にしてやれんで、ゴメン。」
最後にそう言い残して、あの人は部屋を出て行った。
呆気ない終わり方だった。
「待って。」
そう言えてたら、せめて失わずに済んだのに。
あたしは、最後の最後まで、素直になれなかった。