ダウト-doubt-
開けっ放しの窓から、聞き慣れたエンジン音が響き渡り、そして、遠ざかって行った。
もしかしたら、戻ってきてくれるんじゃないか…。
『ごめん。やっぱり、もう一回やり直そう。』
そう言って、抱きしめてくれるんじゃないか…。
そんな、微かな期待も、僅かな可能性も、消されてしまった。
あたしにはもう、何も残ってない。
全て終わってしまった。
自分から切り出した言葉を、死ぬほど後悔した。
それでも、取り消す事は出来ない。
『サヨナラ…』
心の中でそっと呟いた。
苦しくて、悔しくて、なのに、涙は出なかった。
一人の男に流せる涙の量は、決まってるのかもしれない。
なんとなく、そう思った。
呆気ない終わりに、今まで自分が、いかに愛されていなかったか、思い知らされた気がした。
続けても終わっても、どっちでもいい。
あの人にとっては、その程度の関係だった。
あたしの存在ごと、否定されたみたいで、それが、痛いくらい、切ない。