記憶の欠片
裕君が傘を貸してくれたから
由紀と私は濡れなくてすんでるけど、
そのせいで裕君が雨に打たれてた。
『裕君も傘入る?
この傘大きいから入れるよ?』
裕『いや、大丈夫ですよ。
それに3人で入ったら
歩きずらいですよ(笑)』
『そうだけど…
風邪ひくよ?』
裕『俺頑丈なんで大丈夫です(笑)』
『…ありがとうね。』
裕『いえいえ。』
そんな会話をしながら、
裕君に教えてもらった近道を歩く。
もうさすがに2時が過ぎているということもあって
車の通りもほとんどなかった。
『ここら辺でいいよ!』
裕『そうですか?
じゃあ気をつけてくださいね。』
『うん。ありがとうね!
はい、傘もありがとう。』
裕『あ、それあげますよ。
それじゃ。』
『え…』
傘を返そうとした時には
裕君は友達と電話をしながら
もう道を引き返していた。
『あ…、ありがとー!
風邪引かないでねー?!』
少し大きめの声で叫んだら
裕君はこちらを振り向かずに
左手を上げひらひらとさせ、
すたすたと暗闇の中に消えていった。
『…行こっか!』
由『うん!さすが紳士様だね~(笑)』