オモイビト


辰はいつものように振る舞ってたけど、どうやら漆と陽紀にはバレているらしかった。

あたしはというと、想とのことなんてすっかり忘れ去っていて、ずっと辰のことを考えてた。


「昴」

「あ、陽紀」

「辰と何を話した?」


……やっぱり、車内でのことが原因みたい。

さすが幼なじみ、かすかな変化にも気付いてあげられるんだね。


「名前の話をした」

「名前って……昨日話した?」

「えっと、まぁ近いような話なんだけど、辰の兄弟って十二支でしょ?それからなんで兄弟で名前が似たりよったりかって話になって、あたしがそれは『印』だって言ったの」

「は?印?」

「親や兄弟との繋がりの印、みたいなこと」

「あぁ、だからか」


どうやら、それで陽紀は納得しちゃったみたいだ。

なにか……わかるような要素があったんだろうか?


「昴、それが敬語の壁の根本的な原因に繋がってんだよ」
< 115 / 200 >

この作品をシェア

pagetop