オモイビト
辰はいつものように振る舞ってたけど、どうやら漆と陽紀にはバレているらしかった。
あたしはというと、想とのことなんてすっかり忘れ去っていて、ずっと辰のことを考えてた。
「昴」
「あ、陽紀」
「辰と何を話した?」
……やっぱり、車内でのことが原因みたい。
さすが幼なじみ、かすかな変化にも気付いてあげられるんだね。
「名前の話をした」
「名前って……昨日話した?」
「えっと、まぁ近いような話なんだけど、辰の兄弟って十二支でしょ?それからなんで兄弟で名前が似たりよったりかって話になって、あたしがそれは『印』だって言ったの」
「は?印?」
「親や兄弟との繋がりの印、みたいなこと」
「あぁ、だからか」
どうやら、それで陽紀は納得しちゃったみたいだ。
なにか……わかるような要素があったんだろうか?
「昴、それが敬語の壁の根本的な原因に繋がってんだよ」