オモイビト
「一人なのは漆と蛍都だけだ」
「あれそれつまり陽紀にも兄弟いるってことだよねぇ!?」
「兄貴がな」
なんか……一気にいろんなことが分かっちゃった気がする……。
「まぁ、話がそれたが、その母親が父親と自分たちを裏切って消えたことに辰はすげーショック受けて、それで『女とは親しくなりたくない、だから敬語で距離を作る』って言いだした」
うわぁ、もう女とは話さないとか言わない辺りがすでに思考が大人……。
さすが辰。
「それを辰だけやらせるのも気が引けた俺たちは五人一緒にそうすることを決め、例外とか決まりとかがどんどん増えてって、結果的に今の状態になった」
「例外……ってつまりあたしとかコーハク?とか、保健室の先生のことだよね?」
「そ。まぁ、そんなことがあったから辰は女が信じられねーし、すげぇ慎重になるし、『繋がりの印』にもいい気はしなかったんだろうな」
「でも、どう思う?って聞いてきたのは辰の方だよ?思い出したくないなら聞かなくない?まぁ、兄弟の話ではあったけど」