オモイビト
「……何があったの?」
「ん?なにが?」
「……想と漆と陽紀が仲良く腕相撲してるよ?しかも1対2だよ?」
実際、あたしは見たことがなかった。
つまり、初めてこんな光景を見た。
陽紀が想と漆と腕相撲している。
陽紀の両手が、右手は漆・左手は想と繋がれている。
それを陽紀は相手の腕が机に着く寸前で止めている。
涼しい顔で、止めている。
そのままちょっと力を入れれば、勝負はもう決まっている。
……のに、なぜその態勢を維持している?
「……陽紀」
「あ?昴、帰って来たか」
「いや、妄想してなかったし。蛍都の話を辰としてただけだし」
しゃべる余裕のある陽紀。
だったら、簡単に勝てるんじゃない?