オモイビト


別れることが怖くなった。

だったら『好き』と言う感情を殺せば、苦しまずに済むんじゃないか。

こんなに悲しい思いは、もうしたくないから。

だったら、あたしは誰も『好き』にはならない。


あの日、強く心に蓋をし、鍵を閉めて鎖を何重にもかけた。

だからあたしは寂しくても悲しくても、そう感じていなかった。

喜びも閉じ込めた。


その蓋をあけてしまったのは、想との再会。

再会と、想からの『強い想い』。


「……昴?」

「しょーくん、しょーくん……」


本当に、あの時の、しょーくんなんだ……。

想が、しょーくんで、本当は大好きだった想くんで……。


もう、わけわかんなくなってきた。

過去の人だと思ってた。

会うのが当たり前なんだから、別れだって当たり前だって、再会なんて期待のカケラもなかったのに……。
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