オモイビト
「……近かったんだ……」
「逆によく気付かなかったね。電車の通る音くらいするでしょ?」
こんな想にびっくりだ。
あの日のように、あたしたちはお店の中に入る。
中にいたのは蛍都と王子だった。
「あれ、辰と陽紀は?」
「辰が陽紀を迎えに行ってます」
「なるほど」
王子の声は、静かな感じでなんか好き。
一方蛍都は騒がしい。
「想、どうだった?」
「何が?」
「昴姉さんと一緒に来た感想は?」
……ただここまで一緒に来ただけで感想なんてあるのだろうか?
「あぁ、うん。……地理は苦手だったらしい。成績はいいはずだったけど、近隣状況が把握できてない」
「……つまり方向音痴は相変わらずってことか」
「ってそれ感想じゃねーじゃねーかよ!!」