アゲハチョウ1
「次は無いと思ってね。」


南雲彩華とその取り巻き達は、愉快そうに笑っている。


「分かってると思うけれど…この事言ったらどうなるかしら?」

「ッ!!」


榛原美奈の肩が大きく揺れる。その反応を見て笑みを浮かべながら南雲彩華達は去った。


「・・・。」


一体どういう事なんだろうか?これは話が分かるまで付き合うしかない。


「面倒な事になりそう。」


私は榛原が去ったのを見届けて、家に戻ることにした。


「…」


暗い暗い森の奥。
私のアゲハ蝶達にとって、格好のこの土地に私達は住んでいる。


地獄の使い魔として、私は何百年もの間この仕事をしている。


今では“地獄渡し”でさえ、苦ではなくなった。
蝶達が私に近づき、行く手を阻む。このアゲハ蝶はただのアゲハ蝶ではない。


それぞれ特殊な能力を持ち、地獄からの使者と言われる。
“地獄渡し”の手伝いをしてくれる、私の一部の部下達だ。


「今日はまだ遊べないわ。」


そう言うと蝶達は私から離れてくれた。
寂しそうな雰囲気を醸し出しながら、
蝶達はそれぞれの時間を思い思いに過ごしている。


暫くそれを見届けた後、今度こそ家の中に入る。
真っ直ぐ目的の部屋へ行く。
他の部屋には興味は無い。


「姫、お帰りなさい!!」

「姫〜!!寂しかったぁ!!」

襖を開ける前に、飛び出してきた金髪の顔のよく似た双子。
楓と蓮。私の仲間の一人だ。


「ただいま。來と馨は?」

「來は今帰ってきたよ。姫。」

「馨ちゃんはまだだよ。姫。」

「そう。」

「蛍が怒ってるよ。姫。」

「なんで?」

「馨ちゃんにお願いしたからだよ。姫。」

「……ありがとう。」


本当は來の元に行くはずだったのだけれども、まずは蛍の話を聞こう。
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