放課後恋愛
「あ!お帰りなさい。俺、ゆっくり休ませてもらっていて、すみません…。」
私の後ろから九条君がやって来ると、お母さんは途端に目をキラキラとさせた。
「あら〜!九条君…だったわよね?いいのよ〜、何時間でもゆっくりしていってね。午前中は航と結希の面倒見てくれて本当にありがとう。」
「こちらこそ、お昼を紗智さんにご馳走になってしまって…。ありがとうございました。あまり長居するのも申し訳ないので、そろそろ失礼します…。」
九条君はお母さんにお辞儀をしてから、私に柔らかい視線を向けて、頭をポンポンと撫でた。
「また明日な、紗智。」
「…うん。」
なんだろう…。
ちょっと寂しい…。
玄関へと歩いていく九条君の背中を見ながら、不思議とそう感じてしまっていた。