放課後恋愛

「今日は本当にありがとうございました。失礼します。」


玄関でも律儀にお礼を言う九条君に、お母さんはすっかりテンションが上がりまくっていた。


「いつでも気兼ねせずに遊びに来てねっ!」


九条君は、声を弾ませているお母さんに、笑顔で“はい”と答えると、ドアを開けて外に出る。


「あっ…!ちょっ、ちょっと待って!」


その瞬間、私の口から自然と九条君を呼び止める言葉が零れた。


「ん?なに?」


九条君は優しく笑いながら、私の傍に戻ってきた。


「きょ、今日は…航や結希と遊んでくれてありがとう…。九条君の優しさ…嬉しかった…。」


自分でも驚くほどの素直な気持ち。


ポロッと言葉になっていた。



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