成熟と化して

「いいですか?あのままにして」

「んー…」

紙田は少し間をあけ、言葉を選ぶように言う。

「ま、あいつがあれで命絶つようなら、それまでの男だということだろ」


「それ、訛って言ってください」

「ま、あんとがそれで命絶ちょーなら、それまでの男たかと」

「絶対どこの方言じゃないでしょ?」

「ああ」

そんなことより―と紙田は話を続け

「あいつは根性だけはあるからな」

「死ぬとか言ってるのに?」

「そういう奴は大体死なない」

「あ、あの人はどーですか?」

佐藤が屋上にいる一人の男を指差す

「俺の今の言葉は無視か?」

と、怒りが含んだ声で言ったが、これも佐藤は無視した

「あれでよくないですか?」

見るからに憂鬱そうなサラリーマンが、屋上から下を除いていた

「何でわざわざ学校で?」

「よし、行くか」

紙田は猛ダッシュで屋上に向かった



坂ッ。間違った。バンッ!!


屋上のドアが勢いよく開いた。

サラリーマンは動揺したように、紙田たちを見る

「おじさーん、誰?」

挑発する様に紙田がサラリーマンに聞いた。顔は玩具を与えられた子どもの様だった

「この例え、よく使われますよね」

と、佐藤は禁断のことを言ったから、空気的存在にする。


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