成熟と化して

「紙田さん、佐藤さん。おはようございます」

「「おはよう」」


部室に行くと、いつも通り二人がいた。

この光景も慣れた。
それと同時に、二人が定位置にいないと何か寂しいものが、込み上げてくる


ニコニコしながら、アホタはドア付近に立っていた。


と、紙田がアホタに


「おまえ、裁判に勝ったのか?」

「はい」

「ふーん…じゃあ、全部使えるようになったんだな」

「はい!!!」


紙田はそかそか、と言いながら、またいかがわし、子どもは読んじゃいけないよ☆本を見始めた。


「アホタ」

入れ替わるように佐藤が話しかけてきた

「はい、なんでしょう」


佐藤は携帯に目線をおとしたまま

「個性ないキャラクターになっちゃったね」

と冷たく言った。

「………」

アホタは口を開けたまま、白く固まっていた。


遠くで、いや本当は近くだが、遠くのような気がした。


紙田が、爆笑していた。





次の日

「コンニチハ、サトウサン」

「あれ?戻したんだ」

「ハイ」


「そう」

とだけ言って、佐藤は携帯に集中した


アホタはこれでいいのだと思い直し、カタカナ表記だけを使うようになった。

しかし、全国のロボット及び、アンドロイドは、カタカナ表記の呪縛から逃れ、今は人間と同じように、全て使っている…らしい。



結局、日本語は、平仮名、片仮名、漢字、みんな大切なのであった。

ひとつでも欠けたら、ダメなのである。


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