成熟と化して
実情はこうだった。
―佐藤は上野を殺す気なんて、一ミリもなかった。
―佐藤はただ、紙田が考えたストーリーに従ったまでだった。
―そして、トイレ以外のこのトラップは、全て紙田が仕掛けた物だった
―偶然動いた木。あれは紙田が作った、ロボットだった。
(つまり操作で、窓に木を近づけた)
―全ては、ただ、上野を楽しませるため。
紙田のモットー、『非日常こそ楽しいことがある』に沿った結果、こうなった。
「命の危険なんて、滅多に味わえないだろ?」
悪びれもせず、笑顔で言う紙田。隣では疲れたようにため息をつく佐藤。
「で、でも…俺に話しかけたのは放課後。まだ一日経ってませんよね?」
「ああ、それ」
佐藤が淡々と説明し始める
「脚本が出来たから、一日になってるから」
「ああ、なるほど」
上野は素直に納得した。
「しかしおまえバカだなー」
ニシシと笑いながら、紙田が言った
「木が動いたら怪しめよ。ま、扱いやすかったけどな。ほとんど計画通りだったし」
「いやぁ~、それほどでも」
照れたように笑う上野。
「いや、誉めてない。貶してるから」
「うん。おまえバカだな。本当に」
またまた笑顔で貶す紙田。それに気づかない上野。