成熟と化して
卒業式は平穏だった。途中までは。
また、芽達は紙田に恥ずかしい思いをさせたくて作戦を考える。
「さすがに、声は裏返すのは無理か」
口に出してしまった芽達。
隣の男二人は、じろりと芽達を見る。
しかし芽達は気づかない。
「そうだ!!卒業証書のときに転ばせたらいいんだ!!!」
芽達の声が、体育館中に響く。
シーーーーーーーン
もともと静かだった体育館が、さらに静かになる。
「…………?」
芽達は、何故、体育館が静かになったのか理解出来なかった。
虚しくラジカセから流れる、BGMだけが流れ続けた
「…芽達、大丈夫か?」
小声で芽達に言う、隣の男。
「…?」
芽達は怪訝そうに見る。
「おまえ、ひょっとして気づいてないのか?」
「何を?」
―こいつ、頭大丈夫か?
と、芽達は本気で隣の男を心配したが、逆隣の男が
「おまえさっき大声出してたじゃん。転けさせるがどうとか」
「……」
「頭大丈夫?」
逆隣の男が、芽達が先程思ったことをそのまんま返した。