成熟と化して
子育て2日目
「先輩、ミルク」
いつもの調子を取り戻した佐藤は、また仕切りだした
「うん、それでこそお前だ」
紙田なりの安心した態度をみせ、今度はちゃんとミルクを作り始めた
ミルクの粉を適量に入れ、お湯をメモリのところまで入れ、あとは、適温になるまで冷やす
これだけ。
―なのに、紙田は、失敗した。
「……」
呆然と、その惨劇をみる佐藤。
その隣で、苦笑いをする紙田。
泣く赤ちゃん。
「と、とりあえず、作り直しましょう」
気を取り直し、またミルクを作ろうと、哺乳瓶を持ったとき
パリンッ
「……」
「……」
「うわぁーん!!!」
―泣きたいのはこっちだ。
目の下に隈を作らせた佐藤が、紙田を睨む。
「いや、哺乳瓶には何も仕掛けてないよ」
「"には"って何ですか!!!"には"って」
「あ…ははは」
「うわぁーん!!」
「赤ちゃんのお守り、よろしくお願いしますねっ!!」
怒りに満ちた声で言ったあと、スペアの哺乳瓶を出した。
―あの子のお母さんも賢いや。替わりの哺乳瓶用意してるもん
でも、なんだったら、紙田に頼まなかったらもっとよかったのに…
慣れた手つきでミルクを作り、赤ちゃんを紙田から奪うと、飲ました。
赤ちゃんも泣き止む
―よっぽどお腹空いてたんだな…
「かわいい」
隣では、紙田が素直な感想を言った。
「赤ちゃん、産んでみたいな」
「先輩は男なので産めません」
ミルクを飲ませながら、冷静にツッコむ佐藤。
「かわいい。めっちゃかわいい」
何故か興奮している。
よーく見ると、いかがわしい本をまた読み始めていた。
佐藤もこればかりはほとほと呆れる他なかった。