成熟と化して
「ごめんね~、俺たち、そういう恋愛系?そういうのは嫌いだから~」
「単なる先輩の僻みでしょ」
「うるせぇ!!大体おまえ―」
ぐちぐち言う紙田を無視し、佐藤は笑顔で少女に言った
「わかりました。手伝いましょう」
少女の顔はぱっと明るくなり、
「本当ですかっ!!!ありがとうございます」
「振られろ振られろ振られろ振られろ振られろ」
佐藤の隣で、紙田は小声で叫んでいた
―数日後
「成功したそうですよ」
「へー、結局俺たち、何もしてねーじゃん」
「まあ、そうですね」
苦笑いで佐藤は答える。
「ま、恋愛だなんて、自分の力でやって、成功するから嬉しさ倍増するもんな」
佐藤は珍しく恋愛を語る紙田に少々驚きながら
ま…一理あるな
と思った
「つーかさー」
「はい?」
「これで、恋愛に酔ってる奴等が続々相談しに来たら、おまえの責任だからな!!」
「何で俺のせいになるんですか!!」
「おまえが引き受けたからだ」
どんな言い訳をしても、決して納得しなさそうな口調で、紙田は言った。
しかし、紙田の予想に反して、恋愛相談に繰る者は、現れなかった。
あの少女が、最初で最後の恋愛相談者であったとさ。