成熟と化して

「今から、この文化祭は我らの手に落ちた!!」

―は?何言ってるわけ?

「我らと言っても、盛り上げ部じゃないぞ☆」

と、かわいく言ったあと、紙田は元の声に戻る

「今日出会った…えーっと名前は、えーっと…誰だっけ?」

と、マイクの前でやりとりしてるせいか、もう一人の男の声が聞こえた。小声で「矢渕だ」とだけ言った。

「矢渕と俺は今日、この文化祭を乗っ取った。ちなみに、至るところに爆弾あるから。よろしく」


と、言って放送は切れた。

「おい、どういうことだよ!!」

佐藤を囲んでいた、怖そうなお兄ちゃんが佐藤に聞いた。

しかし、佐藤はそこにはいなかった。
どさくさに紛れ、逃げたのだ。

紙田のことを聞かれると思ったのも、微妙に入っているが。




カフェでアイスソーダーを飲みながら、怪しい男は内心慌てていた。
乗っ取られるということではない。
文化祭を潰すのは自分。楽しんでいる輩を潰すのは自分。
なのに、どこの馬の骨ともわからん奴に横取りされるなんて…。


―よし、こうなったら矢渕とかいう奴をぶっ殺し、俺が主犯になってやる


男は矢渕を殺る、ということに集中しすぎて、ある重大なことを見落としていた。


しかし、それに気づかず男は普通に金を払い、普通にお店を出た。

なんら変わりない、日常生活と一緒の様に


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