成熟と化して
「今から、この文化祭は我らの手に落ちた!!」
―は?何言ってるわけ?
「我らと言っても、盛り上げ部じゃないぞ☆」
と、かわいく言ったあと、紙田は元の声に戻る
「今日出会った…えーっと名前は、えーっと…誰だっけ?」
と、マイクの前でやりとりしてるせいか、もう一人の男の声が聞こえた。小声で「矢渕だ」とだけ言った。
「矢渕と俺は今日、この文化祭を乗っ取った。ちなみに、至るところに爆弾あるから。よろしく」
と、言って放送は切れた。
「おい、どういうことだよ!!」
佐藤を囲んでいた、怖そうなお兄ちゃんが佐藤に聞いた。
しかし、佐藤はそこにはいなかった。
どさくさに紛れ、逃げたのだ。
紙田のことを聞かれると思ったのも、微妙に入っているが。
※
カフェでアイスソーダーを飲みながら、怪しい男は内心慌てていた。
乗っ取られるということではない。
文化祭を潰すのは自分。楽しんでいる輩を潰すのは自分。
なのに、どこの馬の骨ともわからん奴に横取りされるなんて…。
―よし、こうなったら矢渕とかいう奴をぶっ殺し、俺が主犯になってやる
男は矢渕を殺る、ということに集中しすぎて、ある重大なことを見落としていた。
しかし、それに気づかず男は普通に金を払い、普通にお店を出た。
なんら変わりない、日常生活と一緒の様に