春も嵐も
「何だかんだ言っても、あたしはリコちゃんがうらやましいのかも」

ポツリと、弥生が呟いた。

「何で?」

「ああやってケンカしていても、いつも仲良しだから。

ケンカするほど何とかって言うのは、あの2人にはよくお似合いね」

ため息混じりに皮肉を行っている弥生に、俺はクスッと笑った。

「ちょっと、何かおかしなことを言った?」

「弥生らしいなって思って」

「あたしらしいって、よくわかんないんだけど…」

いつかのやりとりの逆パターンをしていることに、俺はつい笑ってしまいそうになった。

「そうだ、親父ンところへ行くか?

そろそろ始まるだろ?」

「そうね、行こっか」

俺たちは盆踊りの会場へと足を向かわせた。
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