春も嵐も
6.暗雲立ち込める
親父の怒鳴り声から、今回の事件が始まった。

「バッカもーん!」

その怒鳴り声に、物干し場でひなたぼっこをしていた俺と猫は飛びあがった。

「ニィー!」

猫は悲鳴(?)をあげると、ものすごいスピードでその場から逃げ出した。

一体何があったんだ?

何事かと思って物干し場を後にして階段へと向かったら、
「シーッ」

階段の前に弥生がいた。

弥生は唇の前に人差し指を当てて、キレイに整った眉をひそめていた。

「どうしたの?」

俺は声をひそめると、弥生に聞いた。

弥生が目で1階を示したので、俺は聞き耳を立てた。

「そんな話を誰が引き受けるか!」

狭い家に、親父の怒鳴り声が響いている。
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